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【遙かなる星々の物語~ウェヌスの章~】プロローグ [遙かなる星々の物語]


 あけましておめでとうございます_._
 本日から『遙かなる星々の物語』新章「ウェヌスの章」の公開を始めます。隔週日曜日更新のゆるゆるペースでやっていきたいと考えてますので、皆さんよろしくお願いします。
 ちなみに表紙イラストは蓮花さん(サイト:「枯花」)に描いていただきました♪ 蓮花さんには本文挿絵も描いていただけることになりましたので、皆さんお楽しみに♪♪

 本日はウェヌスの章プロローグを公開します。ルビ等は単語のあとに()で記載してあります。ちょっと読みづらいですがご容赦ください。


テラの章】 <- Previous Story                         Next Story -> 【???】

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『遙かなる星々の物語~ウェヌスの章~』概要
この宇宙を遍く様々な星々の物語を、独自の世界観の元に擬人化して描く大河SFファンタジー。ウェヌスの章はテラの章に続くこの太陽系創世紀のお話――金星創造をテーマとしたストーリーです。
《あらすじ》
 地球の現実を変異させた女神(テリス)現出事件から十三年、朔夜は作人と結ばれ二児の母となっていた。創星界(エデン)とのコンタクトもなくなり、平凡な幸せを謳歌(おうか)していた朔夜はだが、久しぶりに『記憶(エピソード)』の奔流(ほんりゆう)に襲われる。
 この惑星、いつか在った時代、無有(ムウ)亜大陸の亜須華(アスカ)という都市に、亜紗(アーシヤ)という乙女が暮らしていた――。
 突然蘇った『記憶』は、朔夜にその都市に起こった未曾有(みぞう)の大災害を幻視させる。この過去は、朔夜に何を伝えたいのか? 全ての『記憶』の起源たる女神(テリス)の身に、いったい何が起こったのか? この現実に、また何か事件が起こるのか……?
 『世界』を巡る新たな戦いの火蓋が今、切って落とされた。

 過去から未来まで、『世界』全てを巻き込んだ壮大なる物語。
 『世界』が変質を繰り返した先で、【悪魔】は【女神】となる――

※この物語は【楽園】【冥星】【地球】の三パートがパラレルで進んでいく構成となっています。それぞれで舞台および登場人物が違っていますのでご注意ください

登場人物紹介
プロローグ/【楽園】1-1/1-2(2011/02/27公開予定)》



プロローグ



 闇の帳(とばり)が落ちる。


 目に映る光も影も、ほんの少しの気配もない真なる闇。
自分の中で息づく生命の鼓動でさえも、その闇の中では溶け出し、静寂に包まれる。


 音もなく光もなく気配すらもなにもないその空間。


 そこでは存在していることですら、
集中して意識を集めないことにはどんどんと朧(おぼろ)になっていく。


 良く、気が狂わずにいられるものだ――


 光も闇も音も匂いも風も温度もほんのわずかな気配やゆらめきも、その空間には存在しない。
まさに、“無”と言うにふさわしいその状態――


 いや、全き“無”ではあり得ないか。


 何故ならばここに自分がいる。闇の輪郭に全て溶け出し、
消えていきそうなぐらいはかないものだが、確かに生きて存在している自分がいる。


 “無”でもない、“有”でもない、
強いて挙げれば“反生命”とでも言うべき空間なのかもしれない……。


 そう、そこは、全てを黒き静寂へと包み込み、“無”へと溶かす。
生き物が奏でる混沌の旋律は一つ、また一つと消えていく――。


 ポゥ――

 
 また一つ、光子が断末魔をあげる。


 この領域の魔の手にその存在を捕まれ、光子は脱することも能わず闇へと還る。


 果たして、この闇の重力圏から抜け出ることのできる存在などあるのだろうか?


 ――いや、在る。


 自ら発した問いに、即座に反駁する内からの声。


 それが、その存在の結論だった。


 例え限りなくゼロに近しいほんのわずかの数でしかなかったとしても、
その領域から抜け出るモノは確実に存在していた。
この短い時間の中でも、確実にその気配は捉えている。


 それに、何よりも自分の存在こそ反証だ――


 自負と共に、そう呟く。


 ただ独り、無謀にも闇と静寂と絶対的な死が支配するその領域に身を浸し、
そして今なお生命の輝きを失わないその存在。
だが全てを圧し潰す闇の絶対領域を前にして、流石にそれ以上踏み込んでいく勇気はない。


 それは理屈ではない。直観で分かるのだ。


 そこは、この世界の闇を司る“反存在”とも言えるモノどもの蠢く領域。
そこへと足を踏み入れてしまったら、もう二度と生きて光を目にすることはできないだろう……。


 アレが、開けてはならぬパンドラの箱の境界線――


 この《世界》から切り離された、別の事象を有する領域。


 ゾクリ――と背筋を戦慄(せんりつ)が駆け上る。


 その向こう――わずかに境界面から漏れ出た光が、命からがら逃げ出してくる。


 通常の世界では我が物顔に、まるでこの世の主のように振る舞っている存在であろうとも、
存在の基盤のそもそも異なるモノの領域にあっては、かくもみじめで弱々しい――



 光子の行方を目の端で追いながら、わずかに口角をつり上げる。


 そう、それは、ある種の真理だった。


 この《世界》を成り立たせている《神》の法則とでも言うべき絶対の真理――


 この世は全て多面的で多層的。或る処で見えていた《真実》も、
別の視点で切り取ってみると全然別のものへと変わる。
全てが多層的な意味を持ち、
それ自体多様な《世界》の中で同時に幾つもの可能性を持って共存する。


 ――だからこそ、どのような可能性を使うことができるかが何よりも重要なのだ。


 だが、その《真理》を知っているモノ自体、そう多くは存在しない。


 ましてや自ら可能性の軸を制御できる能力(チカラ)を有した存在など――


 瞬間、脳裏に浮かんだ神々しい《光》を纏(まと)ったその存在の姿に、
ギリリ――と知らず奥歯に力が籠もる。


 許すことはできない。あの存在だけは……。


 自らに都合良く《真理》をねじ曲げ、欺瞞(ぎまん)に満ちた《世界》をもたらした罪。
そして何より、そのために、大切な存在(ひと)を永劫の地獄へと追いやった……。


 それが例え《神》に刃向かう行為だとしても、必ずやその《存在》を消してみせる。


 そのために、その決意を新たにするために、この領域を訪れたのだ。


 この《世界》で唯一、かの《存在》の力の及ばぬ領域――
この世とは別の理(ことわり)が支配するという、パンドラの箱の向こうを見るために……。


 本当に、やれるのか……?


 心の裡(うち)で声がする。この《世界》の理を超えた《世界》の中身を垣間見ることなど……。


 我が《父》もまた、彼の《存在》と同じくこの《世》の理を超えた《存在》――
その血を引いた自分ならば……。



 それでも確率は五分と五分か……いや、もっとずっと分が悪い賭けかもしれない。


 だが――


 それでも、やらざるを得ない。


この《世界》の《神》とも言えるかの《存在》に対抗するためには、
この《世界》の理に縛られていてはいけないのだ。


 視点を、ずらすことが重要だ――


 それは、先程再確認した絶対の《真理》。
それを胸に、今まで踏み出すことのできなかった一歩を進む。




 そうしてその瞬間――




 闇の御子は事象の境界面を突破した。


(【楽園】1-1へ続く)


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タグ:創作小説
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